半透膜シートと砂糖で文化干しを作る

年末ってやつです。

独自の調査によると2017年があと数日で終わると予言している人やメディアが多数現れているそうです。
まったくそんなデマを…だれが……うっ頭が

今回はちょっとむずかしい話

本題の前に小話を挟むっていうの一回始めるとなかなかやめ時が見つかりませんよね、ということで今回はちょっと小難しい理屈を交えながらちょっとしたおつまみを作った話をしたいんですが、突然ですがみなさんピチットシートってご存知ですか?

なにそれ

利用方法は多岐に渡るんですが、簡単に言うと食材から旨味成分などはそのまま、水分だけを抜き出してくれる脱水シートです。
ベランダに干したりする必要なく干物が作れるスグレモノで、魚の干物だけじゃなくパンチェッタやベーコンの乾燥、その他食材の下処理に使えます。
燻製を自作してる人からすると非常に便利で夢のアイテムなんですが、市販されているピチットシートには僕的には1つ弱点がありまして。
それは袋状に加工できないという点で、ピチットシートはその形状から1枚のシートとしてしか使うことができないため、挟んだ食材が空気に触れることを防ぐ事ができません、一夜干し程度だと問題ないのですが、お肉を長期に渡って脱水したい場合など、空気に触れるのは結構なデメリットで、出来る限り触れさせたくない
※昔はこの他にも1枚当たりの値段が高い(今はかなり安くなってお徳用もあったりする)とか、入手難易度が高い(今はamazonもあるし、大きなホームセンターなどにも売ってる)なんてのもあったんですが時代と共に解決してます。
ということで、このピチットシートの弱点を補いつつ、なにか他のもので代用できないか?という話です。

ピチットシートはどういう原理なのか?

公式サイトで説明されてます。

PVAで出来た半透膜の中にモル濃度の高い階層由来のゲルが入っていて、浸透圧で水だけを吸う仕組みですね、なるほど!
数少ない知的アピールのチャンスだったのでわざと難しく言いましたが、↑のサイトに詳しく図解されてますのでそちらを見ると非常にわかりやすいと思います。
さらに僕がもうすこしわかりにくく説明しますと、旨味成分などは通さないけど水(水分子)は通すサイズの超細かい穴が開いたシートの中に、水を引っ張る力(浸透圧)のあるモノが入っていて、そいつがシートを隔てて接触している食材の水分をぐいぐい引っ張るため、水(水分子)だけがシートを通って吸収され、シートを通れない他の成分はそのままという仕組みです。
もうすこしじゃなくてかなりわかりにくい説明でしたが、実はこれ日本では随分昔からある「文化干し」という加工法と同じ仕組みなんです。

文化干しとは

現在では天日干しの対義語(冷温風で乾燥させたもの)として使われていることが多いのですが、もともとはセロハン紙で包んだ魚を灰や珪藻土などでさらに包み脱水させて干物を作る加工方法を指していました。(これは諸説あり)
セロハン紙はPVAシートと同じで半透膜になっていて、珪藻土や灰の浸透圧が水分を引っ張るわけですね、つまりピチットはこの仕組をオールインワンにしたシートということです。

ということは

袋状に加工できる半透膜シートで食材を包み、その上から浸透圧の高いもので覆えば良いということになります。
シートを家庭で袋に加工するには、100均などでも売ってるフードシーラーや、ハンダゴテみたいな形をしたハンドシーラーでシートを熱で溶着して加工するのが一般的です。
では入手が簡単なセロハン紙を袋状に加工すればいいのか?と考えるのが普通ですが、実はセロハン紙はその名の通り紙(セルロース)で出来ており、見た目に反して熱で溶けたりしないのでフードシーラーなどで溶着できません。
接着剤を使うとなると、接着剤部分と食品が接触する可能性を考えるとちょっと厳しいですね(安全な接着剤はあるとは思いますが)
その点PVAシートは樹脂なのでフードシーラーなどで熱溶着できるのですが、なんとこのPVAシートは市販されておりません、ガーン
 
 
そこでね 我々スタッフ一生懸命探しました。

そしてね、見つかりましたよ、お母さん。
 
ビニロン袋~ テレレレッテレー
 
PVA(polyvinyl alcohol)はポリビニルアルコールという合成樹脂で、このPVAを原料にしてシート状にしたものをPVAシートと呼ぶわけですが、前述した通りPVAシートそのものは一般には市販されてなく、ピチットシートの販売元であるオカモト株式会社(コン○ーム作ってる会社と同じ系列)に問い合わせてみても、「シートそのものは販売してないしバルク品も無い」とのことで八方塞がりかと思ってたんですが、色々調べて見たところPVAを原料とした合成繊維の一つにビニロンというというものがあるとの情報を掴み、ビニロンでいろいろ検索してみました。
調べてみるとこのビニロン、なんと日本初、世界でも2番目に開発された合成繊維で非常に古い歴史をもっていて、見た目がツヤツヤで手触りがしっとりとして高級感があるので昔は衣料品の梱包に使われることが多く、Yシャツをクリーニングに出して戻ってくる時の袋なんかにもよく使われていたそうですが、逆に今では古すぎてほとんど流通してません、「ほとんど」流通してないとはいえ、一部のネットの問屋さんで販売しているところを見つけ、注文可能な最低数が少なめのサイトを選んで購入してみました。(あとでわかったんですが、街のパッケージショップなどでも取り寄せが可能な場合があるそうです)

ビニロン袋お披露目

 
この高級感のあるツヤわかります? 言われてみれば昔は学生服のYシャツとかクリーニングに出すとこんな袋に入って返ってきてたような?

 
このビニロンもPVAシートの一種ですのできっちり半透膜で、袋状に加工できるどころか既に袋状に加工されてるじゃないですか奥さん! どうでもいいけど、自分のことを手前と表現しますが、自分の奥さんを紹介するときって「手前の奥さん」ですって言うとすごい3D感がありますよね、無いですかそうですね

ということで実際に試してみた

ここにミズダコの足を輪切りにして醤油と酒に浸けて2~3日たったものがあります。

 
こいつをビニロン袋に入れて、砂糖を2ミリくらいの厚さに敷き詰めたバットに置きます。
なぜ砂糖を使った理由は、砂糖は塩よりもイオンのサイズが大きく、塩にやや劣るものの十分な浸透圧を持っているため、調理用に作られていないビニロンのミクロの穴が水が通ることで広がってしまったときに、塩よりも穴を取ってしまう可能性が低い砂糖を使いました。

 
さらに上からどっさりと砂糖を平らに盛り、ラップをして冷蔵庫で1~2日置きます。(ここ写真を撮り忘れたので想像でお願いします。)

2日後…

見てください、あんなにこんもりと盛った砂糖がビニロンを通してにじみ出た水分で溶けてます。

 
わかりにくいけどバットに砂糖水がかなり溜まってます。

 
砂糖水でドロドロになってるところから袋を取り出し、袋についた砂糖水を軽く洗い流したらタコを袋から出してみると…

 
二回りほど縮んで色が濃くなってますね、表面の手触りはしっとりサラサラでしていて、ベタつきは感じません、当然ですが砂糖は袋の中に入ってこれませんので甘みも移ってません、この方法で脱水すると表面が過剰に乾燥しないのでカサカサにならないのがいいですな

大・成・功

結果としては大成功でしたね、今回はタコで1~2日で済みましたが、パンチェッタやハムを作る場合1週間は当たり前に干すため、何もせずに冷蔵庫に入れておくと他の食品から微生物や雑菌をもらってしまったり、ニオイが移ったり、表面がカサカサのカッチカチに乾いてしまったりする(ラップをすると乾燥しないのでラップができない)んでビニロン脱水はかなり有効だと思います。
ちなみにこのタコはこのあとオークで1時間ほど燻製にしてから、食べる直前に炙って縦に1~2ミリのスライスして食べます、冷蔵庫で1ヶ月は持つので年末年始のお楽しみってやつです。

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